堀尾 とみゑ/看護統括部長
国立病院勤務、企業の訪問看護ステーション勤務を経て、訪問看護ステーションそれいゆ 所長
訪問看護ステーションで働く前は、国立病院に勤めていました。病院内保育園があって子供を預けることができるなど働く環境は整っていましたが、子供を抱えながらの夜勤の負担や、病気で休んで周りに迷惑をかけたくないという思いもあり、14年半務めた国立病院を35歳で退職。モデル事業として看護協会が訪問看護ステーションを立ち上げると聞いて「訪問看護」に興味を持ち、企業が開設するステーションに飛び込みました。以来20年近くになります。
訪問看護は思ったよりも大変です。看取りの機会は多いですし、基本的に仕事から解放されても利用者さん、患者さんのことはいつも気にかかり、その意味では休みの日も本当には心が休まらないと言えるかもしれません。私の場合は家族の理解があり協力があったため、今まで続けられました。
ただ、訪問看護を続けていると、訪問看護ならではの喜びがあると感じています。何度も同じ看護師が患者さんのお手伝いをすることで信頼関係を築くことができ、だんだんと日常会話の中で新しい気づきや、考えていることや苦しんでいることが理解できるようになったり。看取りの患者さんであれば闘病生活の中でも病院より自由が得られるため、会話ができたり、食べたいものを一口でも食べられたりするなど、小さな喜びを分かち合える機会がたくさんあります。
患者さんはほぼ人生の先輩なので、会話をすることで自分の人生の学びの機会になりますし、色々な時代を生きてきた人たちとの関わりを通じて自分が人間的に成長し、育ててもらえるような感覚があります。
忙しい病院勤務時代とは異なる深さで、患者さんの人生に関わることができるのも、訪問看護の魅力です。
訪問看護は、基本的に密室での業務になるため、コミュニケーションをとるうえで良かれと思ったことでも患者さんやそのご家族とトラブルになることがありますが、ここにはトラブルは個人で抱え込まず、みんなで共有してケアしたり話し合える環境が整っています。また、特定のスタッフに過度の負担が行かないようなシフトや、研修の機会もできる限りバックアップするなど、仕事を通じた成長とプライベートの充実といったワークライフバランスをうまく取れるような仕組みができています。
訪問看護では、看護師としての能力だけでなく、一人の人間としてどれだけ共感できるか・寄り添ってあげられるかという人間力が大切になってきます。壁にぶつかったり、いろいろなことを経験することで人として成長できます。
何よりこのような環境を、前向きに「楽しんで」いただける方と、一緒に働けることを楽しみにしています。